宇宙には夢があります。まだ地球にいる私たちにとって未知なる世界が広がっているため、その夢は果てしなく大きく膨らむものなのです。「宇宙ってどんな空間が広がっているんだろう。知ってみたい。」と誰もが気になっていることを現実に明らかにしていくのが、宇宙工学分野のスタート地点になります。
近年、日本人宇宙飛行士の活躍や宇宙探査活動、映画やドラマの影響もあり、日本人にとっても宇宙は身近になりつつある宇宙開発事業。特に、最近では日本でもJAXA(宇宙航空研究開発機構)を中心とした官民一体のプロジェクトチームによって、ロケット開発事業が躍進的に進んでいるのは誰もが知るところでしょう。
しかし、日本における宇宙開発事業のベースは、これまでアメリカが培ってきた最先端の技術と膨大な専門知識となっています。つまり、宇宙開発分野において、アメリカほど宇宙工学を研究する環境が整っている国はないということになります。アメリカ政府機関でもある米国航空宇宙局(NASA)や世界屈指の航空産業界が研究資金や研究環境を提供することによって、大学内でもさらに宇宙工学の専門性を追求した研究現場を実現することができているからにほかなりません。
将来は宇宙飛行士や宇宙開発、ロケット開発に関わる仕事がしたいと夢を持っている人は、まず宇宙工学を学ぶことが大きな第一歩となります。ぜひアメリカの大学で最先端の宇宙工学を学んでみましょう。
1.アメリカの大学で学ぶ宇宙工学とは?
宇宙開発に関わる仕事は多岐に渡り、その専門部署によって宇宙との関わり方は変わってきます。
宇宙開発と言えば、映画やドラマにもよく見かける宇宙飛行士やミッションコントロールスタッフなどのイメージがすぐに浮かびます。しかし、実はその他にも宇宙ロケットや探索機、宇宙ステーションの設計製造をはじめ各機材の整備、ミッション計画や運営管理、さらには飛行士たちの訓練担当者や健康管理を行なう医療チームなど、宇宙開発分野において多岐に渡る専門チームが一つの宇宙ミッションに関わっているのです。
そのミッションに関わるスタッフが共通して学んだ専攻科目が、「宇宙工学」となのです。
①:工学分野を総合的に学ぶ
宇宙開発に携わる基礎として、工学分野全般を総合的に学びます。物理学や化学から始まり、機械工学、流体力学、材料工学、構造力学など徐々に工学の中でも専門分野の域へと進みます。その他には、天文学や気象学といった航空学と重なる分野も必須科目として学ぶことになります。
基礎的な工学分野を学ぶと、航空力学やエンジンを含む機体構造を学び、実際に機材を作成する専門分野へと進むことになります。
②:メディカル分野や生活分野の基礎を学ぶ
宇宙飛行士やコントロールミッションのスタッフともなれば、宇宙滞在をメインとするミッションスタッフを希望する場合は、宇宙空間という限られた空間、人数であらゆるミッションをこなし対処していく必要があるため、生理学を含むメディアカル分野をはじめ、心理学や生活科学などの生活分野においても幅広い総合的知識が必要となってきます。
工学とはかけ離れた分野となりますが最先端の研究を重ねていくうえでは、工学の枠を超えて非常に必要とされる知識となります。
③:開発チームでデザインプロジェクトを学ぶ
宇宙工学の中でも専門分野に入ってくると、大学の講義による科目履修と並行して開発テーマに沿ったデザインプロジェクトに参加することになります。所属する開発チームごとに分かれ、宇宙ステーションやロケット、探索機、ロケットの設計、模型製作を行ないます。
時には、インターンシップを通じてNASAや民間の研究プロジェクトの現場に立ち会う機会もあり、宇宙工学を学んだ集大成として研究現場に参加することが可能となっています。
2.アメリカで宇宙工学を学ぶメリットとは?
宇宙工学を学ぶためにアメリカ留学することは、決して特別なことではなくむしろ日本では得られないメリットのほうが多くあるため、あえてアメリカの大学に留学することを選ぶ人も少なくありません。
それでは、アメリカで宇宙工学を学ぶ主なメリットをご紹介しましょう。
①:宇宙工学を学べる大学が選べる
宇宙工学に興味のある人ならすでにご存知かもしれませんが、実は日本では宇宙工学が学べる大学は一部の国立大学のみとなっており、学べる環境が大変限られているのが現状です。
アメリカでは最先端の宇宙工学研究を行なっている有名大学をはじめ、全米で約90校を超える大学あり、自分に合った大学を選ぶことができます。
②:大規模な研究資金により充実した研究現場で学べる
アメリカの大学が開校している宇宙工学科は、大学、NASAを筆頭とした政府公的機関、そして航空産業界による「学官産協同」の研究体制が確立しているため、日本とは比較にならないほどに充実した研究現場、講義が開設されています。
政府機関や航空産業界から寄付される大規模な研究資金や環境、研究開発チームにより、世界をリードし続けるアメリカの宇宙工学分野で学べることは大変貴重な体験であり、今後活躍する専門分野において大いに有利な経験として挙げることができるでしょう。
③:インターンシップで最先端の宇宙工学の研究現場に携われる
デザインプロジェクトなどの専門課程において知識も技術も修得すると、大学からインターンとしてNASAをはじめ各航空メーカーが共同で行う研究プロジェクトに参加することが可能になります。
宇宙工学で有名な大学の中には、NASAと提携を結ぶことで履修講義の一環としてNASAでのインターンシップが可能な大学もあり、インターンシップ中に世界最高水準の研究技術に触れ、同時に研究に立ち会うことができる環境はアメリカ留学の大きなメリットと言えるでしょう。
3.アメリカの宇宙工学にかかる費用と留学期間
アメリカ留学で本格的に宇宙工学を学びたい場合は、全米にある工科大学はじめ宇宙工学の研究において充実した講義と研究ができる4年制大学で学ぶことをおすすめします。
①:おすすめの留学期間
NASAや各航空メーカーの研究現場にインターンシップとして参加することを考慮すると、留学期間として最長4年間と見ておくと良いでしょう。なかには、大学卒業後、そのまま大学院へと進学し、さらなる専門分野の研究に携わる人もいるので、留学期間はさらに長くなる場合もあります。
②:気になる留学費用
アメリカの大学にも州立大学と私立大学とあり、学費は断然私立大学が高額になります。また、留学先となる都市や地域によって生活費としてかかる費用は変動します。また高額になる学費については返済不要のスカラシップを検討してみるのも良いでしょう。詳しくは、アメリカの大学留学費用について【期間別の概算費用と奨学金情報】で詳しくは説明しているので、ぜひ参考にしてみましょう。
大学別学費一覧
大学 | 1年間 | 4年間 |
---|---|---|
工科大学 (MIT, CIT) | US$47,000~US$48,000 | US$188,000~US$192,000 |
州立大学 | US$30,000~US$40,000 | US$120,000~US$160,000 |
ただし、工科大学と呼ばれる大学は年間の学費が総合大学よりも高額になっている大学が多く、MIT(Massachusetts Institute of Technology)では年間授業料だけでUS$48,000を超えており、西海岸の名門校でもあるCalifornia Institute of TechnologyでもUS$47,000を超えており、授業料だけでも4年間ともUS$188,000~US$192,000ほどかかるため、大変高額な費用となります。年間学費は毎年変動があるので、志望校のホームページで確認してみると良いでしょう。
一方で州立大学の場合は、年間学費US$30,000~US$40,000の場合が多く、4年間総額になるとUS$120,000~US$160,000ほどとなり高額ではありますが、上記の工科大学と比較すると留学費用のうち固定費用として掛かってくる学費が少し安く抑えることができるようです。
願書提出時や合格通知をもらったら、大学に奨学金や学費一部免除などのFinancial Aidについて質問や確認、必要であれば申請も合わせてしておくことをおすすめします。
4.アメリカ宇宙工学留学におすすめの大学5選
アメリカには、全米で約90校を超える大学で宇宙工学を学ぶことができますが、なかでも最先端の研究が盛んで人気の大学を5校ご紹介しましょう。
①:Massachusetts Institute of Technology
Massachusetts Institute of Technology (MIT)
The mission of MIT is to advance knowledge and educate students in science, technology and other areas of scholarship that will best serve the nation and the world in the 21st century.
マサチューセッツ州にある世界トップクラスの工科大学です。言わずと知れたアメリカの工学分野を牽引する名門校として。宇宙工学についても人気の高い大学となっています。願書提出期限が1月初旬となっており願書締め切りが早いことでも有名で、その分志願者が多いことが分かります。MITを目指すのであれば、早めの準備期間が必要でしょう。
②:Purdue University
Purdue University
Learn about Purdue University, a major research university located in Lafayette, Indiana known for discoveries in science, technology, engineering and more.
インディアナ州にある州立大学で、「Cradle of Astronauts(宇宙飛行士の揺りかご)」というニックネームがつくほど.宇宙工学に強く、数多くの研究者や宇宙飛行士が学んだ工学部を持つ大学として全米でも高レベルの大学として知られています。充実した専門過程だけでなく、比較的安い学費が留学生からも魅力の大学となっています。
③:University of Texas at Arlington
The University of Texas at Arlington
The University of Texas at Arlington is a growing research powerhouse committed to life-enhancing discovery, innovative instruction, and caring community engagement.
NASAの本拠地であるテキサス州ダラス郊外にある、宇宙工学分野において全米屈指の実力校です。その立地の良さからNASAとの共同プロジェクトや実習プログラムも豊富に揃っています。宇宙飛行士が何人も輩出している大学としてもその名前を知らない人はいないでしょう。
④:Georgia Institute of Technology
Georgia Institute of Technology
Georgia Tech is ranked among the world’s best universities. Based in Atlanta, the large, public university provides technologically-focused education.
ジョージア州アトランタに位置し、アメリカ国内州立大学ランキングで常に10位以内にランクインしているアメリカのトップクラスの工科大学となります。特に航空宇宙工学の全米ランキングはTOP3に入る程のレベルとなっています。もちろん、履修講義をはじめ、宇宙工学分野の各研究においても最先端の知識と技術を誇っています。
⑤:University of Alabama in Huntsville
University of Alabama in Huntsville
The University of Alabama in Huntsville (UAH) is one of the nation’s premier research universities and a member of The University of Alabama System.
あまり聞き慣れない大学名かもしれませんが、実はNASAから絶大な信頼を寄せられている大学のひとつがアラバマ州立大学ハンツビル校なのです。NASAが各大学の宇宙工学部に投入する研究金額は全米で6位を誇り、宇宙開発プロジェクトに関わる研究を大学の各開発チームが担っていることからNASAのハンツビル校への信頼度がうかがえます。
5.アメリカに宇宙工学留学するまでの留学準備の流れ
アメリカに宇宙工学を学びに留学する際の、留学準備の流れについてご紹介してきましょう。
高校卒業から直接アメリカの大学に入学する場合は、願書締め切り時期について願書や志望校のホームページで確認しておきましょう。ほとんどの工科大学は在籍学生数が多いため、1月初旬に願書締め切りとする大学が多いようです。
この願書締め切りに合わせて、12月までにはTOEFLやSATにおいて志願者に提示されるスコアはクリアしておくことが必須条件になります。できれば遅くとも高校2年の夏頃から英語対策の勉強を始めると良いでしょう。
アメリカの大学入学審査では、日本のように入学試験をパスすれば合格という簡単なものではなく、日頃からの学校生活態度や学校の成績も審査の対象になるので、「留学するから関係ない」というのではなく、毎日しっかりとした学校生活を送るようにしましょう。
自分で出願したり面接を受ける自信がまだないという人は、留学エージェントが行っている留学説明会に参加してみることもおすすめです。毎年秋に説明相談会は開催されているようなので、資料や情報収集のために参加してみることも大切です。
その時はできるだけ保護者と一緒に参加し、保護者にもアメリカ留学についての理解、宇宙工学に関する興味を持ってもらうようにしましょう。
宇宙工学は未来への大きな希望となる分野であり、宇宙に興味ある人がアメリカで最先端も技術と知識を習得し価値ある研究に参加することによって、新しい発見や宇宙開発に欠かせない人材になる可能性はおおいにあります。
宇宙へ羽ばたく前に、まずは世界をリードするアメリカの宇宙工学分野へ羽ばたいてみましょう。